以前、Youtubeのインタビュー動画を企画したときに、訓練生・合格者(職種は日本語教師)の方に質問を募集してみました。
動画の中ではお答えできなかったので、自分の経験や同期から聞いた話をもとに、この記事上で答えることにします。
現在 活動している身として考えさせられる内容ばかりだったので、ぜひ共有したいと思います。
結構長いよ!笑
Q1. 日系社会の日本語教育に関わる中で、
ブラジル日系社会だからこそ、よかったなと思うことはありますか?(教室活動内外問わず)
A. 生徒の知っている言葉を通して、
家族(の歴史)が見えること。
年齢に関わらず全く話せない3世,4世でも知っている日本語がいくつかあります。
食べ物であることが多いものの、「まくら」という単語が出てきて懐かしんでいる大人の生徒さんを見た時、この家庭ではまくらだけは日本語を使ってたのかな〜と想像してほっこりします。
家庭によって話されていた方言や使われていた日本語が異なる、ということを授業の中で体感するのはとてもおもしろいです。日系社会ならでは。
👧(10歳) ブラジルの歌の方が好き!
👩🏫じゃあ日本語の歌で知ってるやつ歌ってみ?(童謡かな…)
👧カンパ〜イ、イマ〜ボ〜クハ人生ノぉ〜♬
👩🏫www長渕さん、これが日系社会です。
#日系社会あるある https://t.co/IdyZV01l4y— シンプルにみかりん (@mica513) 2017年11月8日
こんなこともしばしば。笑
教室外だとやっぱり食事です。
日系社会の発展のお陰でしょうゆ・みそ・みりんは比較的簡単に手に入ります。味噌や納豆を手作りしている地域もあったり、代々育てている日本の野菜をおすそ分けしてくれるお母さんもいます。
そんな材料で作った「おいしい!」が、日系人の歴史と味の継承の上に成り立っていると考えると、「ありがたやありがたや…」と先代の移民の方々に想いを馳せるのです。
Q2. 逆に日系社会で教える中での厳しさ、難しさは?
A. 日系人の”日本に対する想いの強さ”
細かく言うと、日本へのこだわり、日本人という理想像、日系人としてのプライド、とかでしょうか。
「私たちの両親はこの国で成功したからすごい人なんだ」
「日本人は素晴らしい民族で、日本という国もまた素晴らしい」
「今の日本人も祖先のようにすごい人に違いない」
ここまで強く思っている人ばかりではないですが、こんな想いが未だに活動中に見え隠れすることはあります。
日系人だから日本語を勉強するのが当たり前ではなくなった時代に、日本語を教えに日本から来た自分。
自分たちの受けた教育が正しかったと信じたい大人たちと、「日本語を学ぶことで見えてくるもの」に気付きづらい子供たち。
こんなギャップがぽろぽろとでてくると、「日系社会で日本語教師」という活動の難しさを感じます。
かなり抽象的な答えになってしまったので、例となるエピソードはこの記事を読んでね↓
掃除でわかった歪(いびつ)なカルチャーショック
Q3. 派遣前訓練から派遣後に実際の活動を進めていく中で、「日系社会」へのどんな想いがありますか?
A. 派遣前…
「日系社会のこと全然知らなかったなぁ」
「日系の子たちが日本語を継承するのってなんか大事だ!」
派遣後…
「ここにいる人たち、日系社会のことを日本の人にも知って欲しい」
「日本や日本語が生徒にとってなんかのきっかけになってくれたら嬉しいかな」
という感じです。
派遣前は”日本にいる人間として”、
ブラジルにはすごく頑張った日本人がいたんだなぁ、とか。
なんでこれもっと学校でちゃんと教えてくれなかったんだろう、とか思ってました。
でも、こっちに来て、その人たちと生活をすると、日本の人と日系社会の中にいる人たちとの温度差を感じます。
こんなに日本のこと想ってくれているけど、当の日本に届いてなくない?
継承語教育という背景は確かにあった。でも言葉や語学力に縛らなくても、伝わるもの・残るものがあるんじゃないかな、と思うようになりました。
私が今 教えている子供たちは、いつか勉強したことや私のことも忘れてしまうかもしれない。
でも、ボランティアの存在がきっかけで、日本への興味が少し湧いたり、あんな折り紙やったな〜って思い出してくれれば、私はそれでいい。
Q4. 日本語教育(特に青年)の要請の中には、「行事の参加」がほぼ含まれています。
行事の参加に関するエピソード(こんなのがウケた、など)ありますか?

A. 授業よりもスタミナが必要!&行事ネタでは新規と交代でも差があります。
授業は毎日・毎週繰り返していくと慣れてきます。
ただ多くの行事はシーズンごとで、1年に1回、任期中に2回。地域やイベントによって規模は異なりますが、慣れるチャンスが少ないので体力・気力を使います…。
日本語学校主催のイベントもあれば、配属先のイベントの中で日本語学校の発表をして欲しいというのもあります。(うちの場合は後者)
ちなみにこれまで私がやったのはこちら。
- エビカニクス(ダンス) @2016敬老会
- ラーメン体操 @2016忘年会
- スマイル音頭 @2017芸能祭
- 作文朗読発表 @2017敬老会
- きみとぼくのあいだに(歌) @2017忘年会
ほとんどが他の隊員に教えてもらったやつで、新規派遣だったので何をやっても新鮮味があり、結構ウケました。同職種や青少年活動の人は、劇・ソーラン節・恋ダンスとかもやってました。
ただ、2代目以降になると「前任がすでにやっている」というケースもあるのでそこは要確認!
Q5. 2年間見知らぬ土地で見知らぬ環境で生活しながら、JICAとしての使命感を持って活動するモチベーション維持方法は何ですか?
同期に聞いてみたら「それ、逆に私も知りたい!」と。笑
それくらいモチベーションを維持するのが難しくなることはあります。私の場合どうしてるっけ?と考えてみて出たのがこの2つ。
A. 同期と繋がる、自分を肯定・評価する、たまには旅行!
これを読んでくれてる方はご存知の通り、私は日系社会ボランティアでも指折りのシェア魔です。笑 自分で言語化して整理するために、いろんなツールで発信しています。
もちろん同期とはあまり絡まずに淡々と活動していたい…という人もいますが、SNSで同期の活動が見れると職種を問わず、元気がもらえます。
前回の記事でも書きましたが、「ボランティアを評価する人」は曖昧です。自分がちゃんとできてるのかわからなくなることもあります。
そんな時は自分を肯定しちゃいましょう!
先月に比べたら成長した、1年前に比べればできるようになった、など。
(同期の活動は覗こうとするのに矛盾してますけど、笑)他人と比べたり他人を否定する必要はなくて、「これでいいのだ」「これでよかったと思えるために次はこうしよう」とかそういうこと。
旅行でも研修でもたまに自分の任地を出ることは大切です。
旅行するとその国の知らなかった魅力を再発見できます。自分の任地愛が確認できるし、外から客観的に配属先や自分の活動を見るきっかけになるんです。
Q6. (言語の問題、価値観の違いも含めて)言いたいことが伝わらない、言っていることがわからないそんな時はどんな工夫をしましたか?効果的だった実例は?
A. 粘ってみて、”合わない”なら割り切る。
コミュニケーションは難しいです。未だに。
報・連・相の概念がないのも理由の一つですが、言語が原因のときは、「わからない」とはっきり言ってました。自分が単語を知らなかっただけ、という場合もあれば、相手がたまたまわかりにくい話し方をするタイプの人、という場合もあります。
価値観の違いのときは、相手の考えも掘り下げてみるけど、どうしても理解できないなら割り切ります。
日本人同士だって全員が分かり合えるわけじゃないし、そんなときは全てを理解することを諦める。笑
「なんでわかってくれないの!?」と共感ポイントを取り上げるんじゃなくて、「ここはわかってもらえた!」と共感できたところにフォーカスして活動に繋げた方が、自分も苦しまずに済みます。
「報告書に配属先の評価とコメントが必要なんです」
「じゃああとでメールで送りますね」数日後whatsapp にて
「みかさんの報告書は配属先の報告書じゃないので、みかさんが評価とコメントを書くべきですよね、OK?」(なんで???)
— シンプルにみかりん (@mica513) 2017年12月15日
心の中で突っ込みたくなる場面は多々ありますけど。笑
Q7. 派遣先以外の団体・学校・施設などを巻き込んで新しい活動や提案などをするときに苦労したこと、気をつけたことはありますか?
A. 組織の中の人たちのポジションと役割を知り、助けてもらう。ひとりでやろうとしない。
配属先のイベントに参加していくうちに、組織の中の大人たちのポジションが見えてきました。
この人はこの人より偉いからどちらに先にアプローチすべきか、機材が必要なこの人に頼む、細かい用具はこの人に言えば出してくれる、など。
これらを把握していて、かつ日頃から(話す・飲むなどで)仲良くしておくと、何か始めるときスムーズです。日系社会はコネと信頼!
ボランティア1人でなんでもやっちゃうと、ボランティア自体が消耗してしまったり、あとで誰も続けない(引き継げない)ということが起こっていまいます。
新しいアイデア・活動を始めるとしても「あくまで私は手伝うだけ、やるのは皆さん(配属先)ですよー」という意識が大切です。
みんなのためにやったのに…私は頑張ったのに…
(ピンときたあなたはミズカミイズム!笑)
いかがでしたか?
質問を考えてくれた方、ありがとうございました!答えになってますか?
ここに書いたことはあくまで私個人の経験による考えです。
特に日本語教師はいろんなパターンの配属先・状況があるので、どれも一概には言えません。
ただ、何か思い詰まったりしたときに「そーいえば…」とヒントを探すくらいのつもりで読んでくれたら嬉しいです。
最近 訓練生や合格者の人と繋がったりするなかで、派遣前 自分がいかに何も考えてなかったかがよくわかる。笑 よく悪くも「まぁ行ったらわかるかぁ〜」状態w
ネットで情報を探せど出てこない、出てこないということはない、ないもんはない。 今はきっと、ちょっとはある。— シンプルにみかりん (@mica513) 2017年12月6日
ということで質問箱を作りました!
匿名で質問ができるサービスだそうです。よかったら質問ください!
https://peing.net/mica513